The Autism Society of America WEBサイトからの抜粋

自閉症は広範囲に及ぶ疾患を含む為、通常、単一の治療で効果があがることはすくないといえます。しかし、家族や専門家達は複数の治療を組み合わせることで自閉症をもつ人々の生活機能を阻害する様々な症状にたいして治療の効果を上げうることを経験してきました。これらの治療には社会心理的、薬理学的なものも含まれます。

自閉症を引き起こす神経に関わる問題を解決する薬、ビタミン、あるいは特別な食餌療法といったものは見付かっていませんが、自閉症スペクトラムの児童の親や専門家たちは、他の疾患の治療に使われる薬が時として自閉症の特定の症状や自閉症に由来する行動の治療に効果を見せる場合もあることを経験してきました。

また、摂取する食物の種類(以下ダイエット)の変更や特定のビタミンあるいはミネラルの追加も、行動にまつわる問題改善の効果をもたらす場合があります。 過去10年間、B6やB12といった基本的なビタミンの補充、あるいはグルテン(小麦などの穀類にある不溶性タンパク成分)やカゼイン(牛乳の主要タンパク)の食事からの除去などが、自閉症スペクトラム児童の消化、アレルギー、社交性等に関わる問題の改善に効果があるという主張が多くなされてきました。但し、全ての研究者や専門家がこれらの療法の効果や科学的裏付けに合意している訳ではありません。

投薬
他の疾患のために開発された薬剤が、自閉症スペクトラムの児童に頻繁に見られる症状や行動(多動、衝動性、注意散漫、不安など)の治療に効果的なケースが数多くあります。 投薬の目的はこれらの症状や行動を低減して教育や行動療法の効果をあげることにあります。

投薬方を話し合うときあるいは処方されるときには、自閉症児童にたいする安全な投薬方をかならず確認することが重要です。 一回あたりの適正な投薬量は? 服用方法は(錠剤、液体・・など)? どのような長期的な影響があるか? 副作用の可能性はあるか? 誰がどのようにして子供の様子をモニターするのか? 服用を始める前に、そして服用中にどのような検査が必要なのか? 他の薬やビタミン、食物と反応する可能性は? 等です。

投薬方法や薬剤間の反応等の複雑さ、そして各個人の薬への反応の仕方の予見が難しいこと等から、保護者は必ず薬剤投与の専門知識を持つ医師を探し、相談をすることが重要となります。

どのような薬があるのか? 
自閉症に関わる症状や行動に対して頻繁に使用される薬は多くあり、その使用を指示する研究があるものも無いものもあります。

The Autism Society of Americaは特定の薬を推奨する立場にはないので、ここで紹介する情報はあくまで、時として使われる薬の種類の概要説明にすぎません。 更に詳細の情報が必要な場合には医療の専門家に質問してください。

セラトニン再吸収抑制剤は抑うつ症、強迫行動、不安等、自閉症に見られる症状の治療に対して効果があることが認められています。 研究者達は自閉症をもつ人々全体の約三分の一のケースで血流中のセロトニンが高いレベルで存在することを発見しています。 このことから、これらの薬は自閉症に見られるセロトニン調節機能の異常に起因する症状を改善するのではないかと考えられています。 これまでに研究されている薬には
clomipramine(Anafranil), fluvoxamine(Luvox), fluoxetine(Prozac)の三種があります。 研究ではこれらの薬が繰り返し行動の回数と激しさを減らし、またいらいら、かんしゃく、攻撃的な行動なども軽減することが認められています。 更に一部の子供達はアイコンタクトと外部への反応にも改善がみられました。 

Elavil, Wellbutrin, Ativan, Xanaxなどその他の薬にかんしてはそれほどの研究がなされていませんが、同様の行動の治療に効果をもつ可能性があります。 但し、これら全ての薬には副作用があるので、投薬開始前に必ず医師と充分に相談する必要があります。

抗精神病薬は過去35年にわたり、精神薬理学における自閉症の分野で最も研究されてきた薬といえます。 精神分裂病の治療の為に開発された薬ですが、多動、反復常動的行動、引きこもり、攻撃的行動など自閉症にみられる症状を軽減する効果があることが知られています。 Clozapine(Clozaril), resperidone(Resperdal), olanzapine(Zyprexa), qutiapine (Seroquel)の4種の薬がFDAで認可されていおり、また、resperidoneのみは自閉症の大人への投薬の管理された実験において検査されています。 抗うつ薬の場合と同様、これらの薬には沈静もふくめて副作用を現す可能性があります。

ADHDの子供の多動に対して使われるRitalin, Adderall, Dexedineのような興奮薬は、自閉症の子供にも処方されています。 あまり多くの研究はなされていませんが、これらは特に高機能児の場合の集中力の改善、衝動性や多動の軽減に効果がもたらす可能性があります。 行動面での副作用は投薬量に関係するので、投薬量を注意深くモニターする必要があります。

ビタミンとミネラル
過去10年以上にわたり、ビタミンとミネラルの補充が自然な形で自閉症の症状を改善する可能性が主張されてきました。 全ての研究者がそのようなセラピーの化学的根拠の有無について合意しているわけではありませんが、多くの保護者及び医師からのサプリメント単体または複数を組み合わせての摂取により自閉症の症状に改善が見られたとの報告が増加しています。

栄養の吸収に関わる問題や栄養の不足についてもまた、まだ複数の同様の実験で確認されるまでには至っていませんが、幾つかの研究がなされています。 2000年に行われた幾つかの研究では、腸の疾患と慢性的胃腸炎が重要な栄養素の吸収を減少させ、基礎的なビタミンを必要とする基本的免疫と代謝の機能を阻害する可能性を示しています。 他の研究では一部の自閉症の子供達はビタミンA, B1, B3、B5, ビオチン、セレニアム、亜鉛、マグネシウム、が不足していることが明らかになっています。一方他の子供達では血清中の銅の血漿中の亜鉛に対する比率が高いケースがあることがわかり、自閉症の人は銅の摂取をひかえ亜鉛を補充して免疫機能の強化をはかる必要があることを示唆しています。 また他の研究ではカルシウムの補充の必要性を指摘しています。

自閉症のケースで最も良く使われるサプリメントはビタミンB群です。ビタミンB群は脳が必要とする酵素を生産する上で極めて重要な役割を持っているのです。 ビタミンB群とマグネシウム(ビタミンBが効果的に働く為に必要)を使った18の研究では、ほぼ半数の人々で行動に関する問題の減少、アイコンタクトの改善、注意力の向上、学習能力の向上等、症状の改善が見られました。 また他の研究では、その他のサプリメントも症状の改善に効果があるらしいことを示しています。 Cod Liver(鱈の肝臓)オイル(ビタミンAとDが豊富)は自閉症の子供のアイコンタクトと行動の改善に効果を示しました。 ビタミンCの補充は脳の働きを助け、抑うつや錯乱などビタミンC不足の症状の改善を促進します。 臨床実験でビタミンCの摂取量の増加が自閉症の子供の症状の緩和に効果のあることがしめされました。 またアリゾナで行われた小規模な実験的な研究では、16人の自閉症の子供に複合ビタミン/ミネラルを与え、睡眠、胃腸の問題、言語、アイコンタクト、そして行動に改善がみられました。

ビタミン/ミネラルの適用
もしもあなたがお子様の日常の食事にビタミンやミネラルの補充を考えているのなら、検査機関や病院で栄養状態の検査をすることをおすすめします。 最も正確な検査は血液検査です。また、栄養療法に詳しい人の助言を得て行うことも重要です。 ビタミンやミネラルの大量摂取はカラダにとって有害にはならないかもしれませんが、多のサプリメントの場合には有害となる場合もあり得るからです。 どのサプリメントを使うか決まったら、ゆっくりと(数週間かけて)摂取量を増やし、更に1〜2ヶ月間効果を注視してください。

自閉症に対する薬の使用の増加は、それらの薬を子供に投与した場合についての研究の必要性を高めました。 The National Institute of Mental Healthは小児精神薬理学の研究機関のネットワーク(RUPPs)をつくり、精神薬理学と精神医学の専門知識の結合を図っています。 数箇所に分散するそれらの研究センターは子供への臨床試験を促進する全国的な機関となることを目指しています。 その中で自閉症の治療法を検討するための五つのグループが作られ、薬の投与量と投薬プログラム、薬の作用のメカニズム、安全性、効能、及び知覚、行動、発達への効果を研究しています。 たとえば、Kennedy Krieger InstituteにあるRUPPではメチルフェニデイト(Ritalin)の広汎性発達障害のある子供と成人に対する効能を研究しています。

もしあなたが投薬を考えているのでしたら、自閉症治療に経験のある医療専門家にコンタクトをとって副作用の可能性等を確認するようにしてください。 自閉症を持つ方は神経系が非常に敏感である可能性があり、通常通りに推奨される投与量を調整する必要がある場合があります。ビタミンの大量投与も、医師の監督のもとでおこなうべきです。

食餌療法(ダイエットの変更)
自閉症をもつ方は特定の食物を受け付けにくかったり、その食物にアレルギー反応をしめすことがあります。 このように食物に対するアレルギーや許容度の低さは、自閉症の原因ではありませんが、さまざまな行動上の問題を助長する働きがあります。 多くの保護者や専門家が、特定の食物成分を食餌から除去したことにより行動に大きな変化が現れた例を報告しています。

自閉症をもつ人にとって、グルテンのようなタンパク質を消化することが困難な場合があります。 アメリカとイギリスの研究では自閉症の子供の尿から高いレベルのペプチドが検出されることが報告され、グルテンとカゼインを含む食物のペプチドの分解が不完全であることを示しています。 グルテンは小麦、オート(カラス)麦、ライ麦に含まれ、カゼインは乳製品に含まれます。 これらの不完全な分解、すなわち過剰なペプチドの吸収は脳における生化学的および神経調節プロセスを阻害し、脳の機能に影響を与えている可能性があります。 これら特定のタンパク質が分解されない理由が解明されるまでは、これらを含む食物を食餌から取り除くことのみが、神経、そして胃腸への更なるダメージを防ぐ唯一の方法といえます。

グルテンとカゼインを食事から取り除くとき、禁断症状が出ることがかんがえられるので一度に全てを取り除かないよう注意することが重要です。 グルテンなしカゼインなしダイエット(GFCFダイエット)を行おうとする方は胃腸病学者や栄養士などに正しい栄養メニューを相談することが必要です。

一部の人々は自閉症の子供にはLeaky Gut (腸からの漏れ---酵母の過度の成長によりおこる腸の微小な穴---があるとの仮説を持っています。そして彼らはこの酵母の過度の成長が錯乱、多動、胃の疾患、疲労などの自閉症に関わる行動上の及び医学的な問題に貢献していると考えています。 サプリメントの補充、抗真菌性物質、あるいは酵母なしダイエットにより行動上の問題を軽減できる可能性があります。但し、抗生物質がバクテリアの抵抗力を高めることになるのと同様に、抗真菌性物質が真菌の抵抗力を高める結果につながる可能性があることに注意する必要があります。

セクレチン
セクレチンは小腸で作られるホルモンで消化を助けます。 通常は胃腸の検査に使用されますが、1996年に自閉症の男の子の内視鏡検査の為にこのホルモンを投与したところ、自閉症の症状に改善がみられました。他のケースでも保護者や専門家が自閉症の子供にセクレチンを試したところ、睡眠パターン、アイコンタクト、言語能力、機敏さなどに同様の改善が見られました。 しかし、National Institute of Child Health and Human Development (NICHD)が行った数回に及ぶ実験では、セクレチンを与えられなかった子供と比較して自閉症の主な症状の明らかな改善はみられませんでした。 また、FDAはセクレチンの使用は一回の投与のみに限り許可をしており、繰り返しての投与の安全性にかんするデータが現時点では無い点も留意する必要があります。
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